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Windows 7サポート終了に備えた取り組みがスタート――、マイクロソフトが進める「Road to 2020 今から始める、移行への道」
2018年1月24日 06:00
Windows 7の延長サポートが終了する2020年1月14日まで、あと2年を切った。日本マイクロソフト株式会社はそれにあわせ、23日に都内で会見を開き、Windows 7やOffice 2010から最新の環境へ移行するための支援施策などについて発表した。
同社では、「Road to 2020 今から始める、移行への道」というキャッチフレーズを通じて、2020年1月14日にWindows 7の延長サポートが終了すること、2020年10月13日にOffice 2010の延長サポートが終了することを訴求。新たな環境への移行促進を図る。
日本マイクロソフトの平野拓也社長は、「2020年に向けてはサイバー攻撃が増えることも想定される。いまから時間をかけて準備をし、環境の最適化を図ることが重要である」とし、「Windows 7とOffice 2010の延長サポートが終了する2020年においては、法人におけるWindows 10の使用率を9割まで持って行きたい。また、中小企業におけるOffice 365およびMicrosoft 365の利用数を現在の10倍にする」との目標を打ち出した。
また、日本マイクロソフト パートナー事業本部長の高橋美波執行役員常務は、「大手企業や中小企業では、検証期間や予算の確保に時間がかかり、Windows XPの延長サポート終了時には混乱を招いた。もっと時間をかけて推進しなければならないという反省がある。今回は、早くからさまざまなパートナーを巻き込んで訴求を行い、早期に移行を図る。いまは、中小企業におけるWindows 7のサポート終了時期の認知度は49%であるが、これを早く100%にしていく必要がある」とした。
「知る」「聞く」「相談する」の3ステップで展開
具体的には、「知る」「聞く」「相談する」という3つのステップで最新環境への移行を促進するという。
「知る」では、2018年1月から、法人向けサポート相談終了窓口をマイクロソフトカスタマーインフォメーションセンター(0120-41-6755)内に開設したほか、Windows 7 & Office 2010サポート終了移行支援サイトを開設。さらにオンラインおよびオフライン媒体などを通じて、法人市場に対する告知の強化を行う。
「聞く」では、移行や導入に向けたイベントおよびセミナーを、2018年だけで約1000回開催する予定。すでに、1月12日に札幌で開催したパートナー共催セミナーを皮切りに、全国各地での開催をスタートしている。
「相談する」では、約30社のWindows 10/Office 365移行支援パートナーを通じた相談体制を確立する。
2017年12月に、リコージャパンとMicrosoft 365支援センターを開設したのに続き、富士ソフトがWindows 10/Office 365移行支援センターを1月23日に開設し、東京および大阪に実機を通じたMicrosoft 365検証ゾーンの設置や、Surface貸し出しサービス、先着10社を対象にした無償導入検証キャンペーンを実施する。
富士通では、Windows 10/Office 365移行支援窓口を設置し、法人ユーザーの各移行フェーズにあわせたサービス、ソリューションの提供のほか、Windows 10移行簡易診断キャンペーン、移行ガイド資料の提供などを行う。
また東芝クライアントソリューションでは、Windows 10移行サービスを提供。Windows as a Serviceワークショップと検証パッケージの展開、Windows 10ライフサイクルソリューションサイトを開設する。
さらにダイワボウ情報システムが、パートナー企業を対象としたMicrosoft 365販売支援相談窓口を開設し、Microsoft 365販売支援および導入アセスメントツールの提供や、Windows 10 PC導入を支援するツールWindows AutoPilot展開のためのサービスメニューの提供、全国1万人以上の販売パートナーに向けたセミナーの実施を計画している。
このほかにも、パートナー各社がさまざまな移行支援策を開始することになるという
。
最新の導入事例を紹介
会見では、Windows 10およびOffice 365の導入を行い、テレワークなどに活用している東京海上日動火災保険の例を紹介。東京海上日動火災保険の大塚祐介常務執行役員は、「Windows 10により、グローバル対応が図れるほか、最新の環境によって、高いセキュリティが提供されること、働き方の改革に利用するための最適なソリューションが実現できるといったメリットがある」とし、さらに、「テレワーク環境における安心、安全を提供するために、保険の観点からもテレワークをサポートができると考えた。日本マイクロソフトの協力を得て、テレワーク保険の提供を新たに開始している」ことも発表した。
また、松山市やイオンアイビスにおいて、最新のWindows 10へと早期に移行したことによるメリットなどについて、ビデオを通じて説明。Windows XPの延長サポート終了時に作業に追われた反省をもとに早期に導入したことや、時間をかけて移行することで、店舗での混乱を回避するといったメリットがあることなどを示した。
なお、同社では、Windows 7 & Office 2010以外にも、SQL Server 2008が2019年7月9日に延長サポートが終了すること、2020年1月14日には、Windows Server 2008の延長サポートが終了することも示した。
価値の訴求による最新環境への移行促進を図る
日本マイクロソフトでは、今回のWindows 7 & Office 2010から最新環境への移行において、単にOSやハードウェアを置き換えるのではなく、最新環境へと移行することで、新たな価値を提案できることを重視したマーケティング活動を開始した。
同社では2018年における取り組みとして、「働き方改革NEXT」と「インダストリーイノベーション」の観点からデジタルトランスフォーメーションを推進することで、「ITモダナイゼーション」につなげる考えを示す。
働き方改革NEXTでは、日本マイクロソフト社内で、より良い働き方を支援する釣るMy Analyticsを活用した事例を紹介。4部門合計で3579時間を削減し、7億円の削減を実現したことに触れた。
「働き方改革は多くの企業において関心事となっているが、その実態は、PCの持ち出しを禁止していたり、メールの使用だけに限定していたりといったように、働き方改革の観点からはインパクトが出し切れていない」(平野社長)とも指摘した。
一方、インダストリーイノベーションでは、業界、業種、業態に最適化したソリューションを提供していく姿勢をみせた。
なお平野社長は、「Windows 7およびOffice 2010はモダンではないということのメッセージでもある」とし、高橋執行役員常務は、「延長サポートの終了は、ひとつのきっかけであり、理由にはならない。付加価値をしっかりと訴求することで、なぜ、ITの最新ソリューションに移行しなければならないのかということを伝えていきたい」とする。
高橋執行役員常務は、「部門間の連携を強化することで迅速な意思決定につなげること、作業時間の削減により、時間の使い方を付加価値領域へと転換を図ることができるようになる。また警察庁の発表によると、2017年上期のサイバーアタックは約2000件に達し、そのうち40%以上が中小企業のものである。大手企業だけでなく中小企業もセキュリティをしっかりすることが大切。新たな環境に移行することで、こうした価値を享受できる」とする。
また、平野社長も、「モダンワークプレースの実現は、新たな製品へのアップグレードを指すことが多かったが、クラウド化やAIが進展し、MRなどの新たな技術が登場することで、新たなビジネスモデルの構築につなげことができるようになった。業務効率や生産性向上だけでなく、クリエイティビティの場を創出できるようになってきている」とする。
そして、これに最適な製品が、Microsoft 365であるとした。同社では、「モダンワークプレースの実現に向けた、いち押しの製品」(日本マイクロソフト Windows&デバイスビジネス本部の三上智子本部長)と位置づけている。
クラウド化、ITの最新化は中小企業こそ重要
さらに、中小企業における最新環境への移行促進を重視することも示した。
平野社長は、「クラウド化、ITの最新化は中小企業こそ重要であり、日本の社会にとっても大きなメリットを生むことになる。日本マイクロソフトが、エンタープライズビジネスで培った経験を、中小企業でもしっかりと使えるように提供していきたい」とした。
最新のITを活用することで、中小企業における人手不足を解消したり、高齢化や出産、育児といったさまざまなライフステージにいる社員を支援したりといったことが可能になる例を示している。
だが、同社によると、中小企業のうち、グループウェアを活用できている企業は12%にとどまっている。また、先に触れたように、Windows 7のサポート終了時期を認知している比率は49%となっている。
平野社長は、「中小企業におけるITモダナイゼーションを進めるための取り組みのひとつとして、Jマッチとの連携により、中小企業のチャレンジを支援する経営支援サービスを提供する。Office 365を活用した生産性向上に向けた活用研修を提供のほか、公的支援制度に関する情報提供により、助成金の活用申請を支援することになる」とした。
なお、今回の会見では、コンシューマ市場におけるWindows 7からの移行については言及しなかったが、会見の後、三上本部長は「コンシューマ市場に向けては、集中的な訴求活動を行うため、2019年1月からの1年間をターゲットに移行支援キャンペーンを行うことになる。消費増税の動きも、コンシューマユーザーの買い換えにはプラスになると考えている。2020年までに、法人市場同様に9割程度に持って行きたい」とコメント。
平野社長も、「Windows 10がリリースされたのが2015年であり、個人のPCの平均使用年数が6年ということから逆算して、2020年に大きな山がくるだろう」とした。